茶畑をいける、という試み
私たちが通っている茶畑があるのは、静岡県を流れる安倍川の最上流地域、梅ヶ島。この地域には、山の斜面を活かした「段々茶畑」が広がっています。
江戸時代には徳川氏の直轄地として、温泉や金山で栄え、高級茶の産地としても知られてきました。しかし今では、高齢化や人口減少などを背景に、手放される茶畑も少なくありません。
そんな茶畑を——そして、その風景を——再生する活動を続けている仲間に連れられて、初めて梅ヶ島を訪れたのは3年前のこと。
彼らの活動によって、毎年ふたたび新茶を収穫できるようになった茶畑。そのすぐ隣には、まだ手をつけられていないエリアが広がっていました。茶の木が2メートル近い高さまで伸び、人が立ち入れないほど茂っている光景に、これが「耕作放棄された茶畑」なんだ、と思ったのを覚えています。

しかし、年に数回、梅ヶ島に通うようになると、少しずつ違う姿が見えてきました。
茶の木には花が咲き、実がなり、季節とともに違う姿を見せてくれる。
苔むした枝からは、茶の木が重ねてきた年月を感じる。
人の手を離れてなお、ちゃんと生き続けている茶の木が、そこにある。
この茶の木を、いけてみたい。
この木の生命力に負けない作品を、いけてみたい。
その思いを今回の展示で形にするために、再び梅ヶ島へ。展示のメインとなる作品にいける茶の木を、茶畑から採集してきました。
茶の木をいける器にも、物語があります。
今年の茶摘みに合わせて、鎌倉の竹で編んだ茶摘み用の竹籠。その竹籠を、今度は茶の木をいける器として使います。
梅ヶ島で育った茶の木と、鎌倉で育った竹。
人の手を離れてなお続いていく自然の営みと、人の手によって受け継がれていく文化、再生されていく風景。
そんなダイナミックな営みの一端を、小さなギャラリーを訪れる方々にも感じ取ってもらえたら嬉しいです。

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